ムハマド・ユヌス講演を読む2
ユヌス講演の第2チャプターです。
グラミン銀行の設立が1983年、以来30年超。
いまやユヌス総裁の元、グラミン銀行が育てた彼の息子達と娘達が活躍しているのです。
携帯電話の威力は貧しい国においてはすさまじく、ほとんど奇跡のような効果をもっているようです。
バングラデシュのテレフォンレディ達の活躍はめざましいものだったのでしょう。
(アフリカの未開発国でも携帯が広がっているようですが、これはほとんど中国人のビジネスになってしまいそうで将来的に不安です。)
ありていな言い方になりますが、グラミン銀行が培ったビジネスネットワーク上でテレフォンレディ達があらたな市場を開拓して行った。彼女達の活動資金はグラミン銀行のマイクロクレジットであった。ということですか。
そして、近年になって物乞いのためのビジネスモデルも開発されたようですが、ある程度社会が豊かになったので始められたようにも思います。それにしても、物乞いの際に何か(何でも良い?)品物を持たせるというのは良いアイデアです。これなら物乞いではなくて立派な商売ですから。
ここまで聞く限りマイクロクレジットの効果は絶大のようですが、もちろん批判的な意見もあるようです。たとえばインドではうまく機能しなかったとか。
グラミン銀行では人対人の信用関係のみで融資を行うそうです。銀行員は村々を回り顧客を管理する。そのため契約書類などは存在しないといいます。つまり管理コストを究極まで絞り込んでいる。
加えて、バングラデシュという国の圧倒的な人口密度の高さも良い方向に作用しますね。
顧客回りが楽になりますから。
その他にもバングラデシュという国と国民の特殊性にも助けられて、グラミン銀行の活躍は続くのです。
続く
==============ムハマド・ユニス講演(2)=====================
第2世代
私達が始めてから30年が経ちます。私達は借り手の子供たちに、私達の仕事が彼らの生活にどのようなインパクトを与えるか、という点で注目しています。私達の借り手である女性は常にその子供たちを最優先します。彼女達が考え定めた16項目の制約のひとつは子供たちを学校に通わせることです。グラミン銀行は彼女達を支援し、まもなく全ての子供たちは学校に行くようになりました。これらの子供たちの多くはクラスで主席となりました。そこで私達はこれを祝福したいと思い、優れた生徒のために奨学金を設けることにしました。グラミン銀行は今や毎年3万件の奨学金を与えています。
子供たちの多くは高等教育に進み、医者や技術者、大学の教員その他のプロフェッショナルとなりました。私達はグラミンの学生が高等教育を終了することを助けるために学生ローンも導入しました。今や彼らの何名かは博士号も持っています。学生ローンは13,000人に利用されています。毎年7,000人以上の学生がこれに加わります。
私達は、家族を貧困層から救い出すことのできる素養を持ったまったく新しい世代を作り出しているのです。私達は、貧困の歴史的な持続に対して風穴を開けたいのです。
物乞いをビジネスに転換
バングラデシュの80%の貧困家庭はすでにマイクロクレジットを利用しています。私達は2010年には100%の貧困家庭が加わってほしいと願っています。
3年前に私達は、物乞いに限定した独自のプログラムを開始しました。グラミン銀行の規則は全て彼らには当てはまりません。ローンは無利息です。彼らは払いたい金額をいくらでも、またいつでも返済すれば良いのです。私達は彼らに、物乞いで家々を回るときにはスナック菓子、おもちゃ、家庭用品などの小間物商品を持ち歩く、というアイデアを提供しました。このアイデアはうまく行きました。今では85,000人の物乞いがこのプログラムに参加しています。物乞いのローンは平均的に12US$です。
私達は貧しい人々が貧困と戦うために有力なさまざまな対策を奨励し援助します。私達はいつもそれらの対策にマイクロクレジットをつけ加えるよう推薦しており、マイクロクレジットはその対策を効果的にすると主張しています。
貧しい人々のための情報技術
情報と通信の技術(ICT)は、距離感を感じさせない境界の無い世界を瞬時的なコミュニケーションによって作り、急速に世界を変えています。それは日々安価になってゆきます。私はこの技術に、貧しい人々のニーズに合うように導入できれば、彼らの生活を変えることができる可能性があると見たのです。
最初のステップとして私達はICTを貧困層に導入するための携帯電話会社を設立しました。グラミンフォンです。私達はグラミン銀行から貧しい女性達に、村々で電話サービスを提供するための携帯電話を買う資金を貸し出しました。マイクロクレジットとICTの相乗効果を狙ったのです。
電話事業は成功し、グラミンの借り手たちにとって魅力的な事業となりました。テレフォンレディ達はすぐにこれを覚え電話事業の采配を振るうようになりました。そしてこの仕事は、貧困から抜け出し社会的信頼を得るための最短の方法となったのです。いまやバングラデシュの全ての村で、30万人のテレフォンレディが電話サービスビジネスを提供しています。
グラミンフォンは1000万人以上の契約者を持つ国内最大の携帯電話会社となったのです。
テレフォンレディの人数は契約者の人数に比べると少数に過ぎないのですが、会社の収益の19％を担っています。今日この盛大な式典に出席している9名の代表のうち4名がテレフォンレディなのです。
グラミンフォンはノルウェーのTelenorとバングラデシュのグラミンテレコムとの合弁会社です。Telenorはその62%の株を持ち、グラミンテレコムは38%です。私達の最終的な目標は、この会社の所有権の過半数を貧しい女性達に渡すことでソーシャルビジネスへと転換してゆくことです。私達はこの目標に向かって進んでいます。いつの日かグラミンフォンは貧しい女性達が所有する巨大事業のもう一つの例となるでしょう。
Second Generation
It is 30 years now since we began. We keep looking at the children of our borrowers to see what has been the impact of our work on their lives. The women who are our borrowers always gave topmost priority to the children. One of the Sixteen Decisions developed and followed by them was to send children to school. Grameen Bank encouraged them, and before long all the children were going to school. Many of these children made it to the top of their class. We wanted to celebrate that, so we introduced scholarships for talented students. Grameen Bank now gives 30,000 scholarships every year.
Many of the children went on to higher education to become doctors, engineers, college teachers and other professionals. We introduced student loans to make it easy for Grameen students to complete higher education. Now some of them have PhD's. There are 13,000 students on student loans. Over 7,000 students are now added to this number annually.
We are creating a completely new generation that will be well equipped to take their families way out of the reach of poverty. We want to make a break in the historical continuation of poverty.
Beggars Can Turn to Business
In Bangladesh 80 percent of the poor families have already been reached with microcredit. We are hoping that by 2010, 100 per cent of the poor families will be reached.
Three years ago we started an exclusive programme focusing on the beggars. None of Grameen Bank's rules apply to them. Loans are interest-free; they can pay whatever amount they wish, whenever they wish. We gave them the idea to carry small merchandise such as snacks, toys or household items, when they went from house to house for begging. The idea worked. There are now 85,000 beggars in the program. About 5,000 of them have already stopped begging completely. Typical loan to a beggar is $12.
We encourage and support every conceivable intervention to help the poor fight out of poverty. We always advocate microcredit in addition to all other interventions, arguing that microcredit makes those interventions work better.
Information Technology for the Poor
Information and communication technology (ICT) is quickly changing the world, creating distanceless, borderless world of instantaneous communications. Increasingly, it is becoming less and less costly. I saw an opportunity for the poor people to change their lives if this technology could be brought to them to meet their needs.
As a first step to bring ICT to the poor we created a mobile phone company, Grameen Phone. We gave loans from Grameen Bank to the poor women to buy mobile phones to sell phone services in the villages. We saw the synergy between microcredit and ICT.
The phone business was a success and became a coveted enterprise for Grameen borrowers. Telephone-ladies quickly learned and innovated the ropes of the telephone business, and it has become the quickest way to get out of poverty and to earn social respectability. Today there are nearly 300,000 telephone ladies providing telephone service in all the villages of Bangladesh . Grameen Phone has more than 10 million subscribers, and is the largest mobile phone company in the country. Although the number of telephone-ladies is only a small fraction of the total number of subscribers, they generate 19 per cent of the revenue of the company. Out of the nine board members who are attending this grand ceremony today 4 are telephone-ladies.
Grameen Phone is a joint-venture company owned by Telenor of Norway and Grameen Telecom of Bangladesh. Telenor owns 62 per cent share of the company, Grameen Telecom owns 38 per cent. Our vision was to ultimately convert this company into a social business by giving majority ownership to the poor women of Grameen Bank. We are working towards that goal. Someday Grameen Phone will become another example of a big enterprise owned by the poor women.
グラミン銀行の設立が1983年、以来30年超。
いまやユヌス総裁の元、グラミン銀行が育てた彼の息子達と娘達が活躍しているのです。
携帯電話の威力は貧しい国においてはすさまじく、ほとんど奇跡のような効果をもっているようです。
バングラデシュのテレフォンレディ達の活躍はめざましいものだったのでしょう。
(アフリカの未開発国でも携帯が広がっているようですが、これはほとんど中国人のビジネスになってしまいそうで将来的に不安です。)
ありていな言い方になりますが、グラミン銀行が培ったビジネスネットワーク上でテレフォンレディ達があらたな市場を開拓して行った。彼女達の活動資金はグラミン銀行のマイクロクレジットであった。ということですか。
そして、近年になって物乞いのためのビジネスモデルも開発されたようですが、ある程度社会が豊かになったので始められたようにも思います。それにしても、物乞いの際に何か(何でも良い?)品物を持たせるというのは良いアイデアです。これなら物乞いではなくて立派な商売ですから。
ここまで聞く限りマイクロクレジットの効果は絶大のようですが、もちろん批判的な意見もあるようです。たとえばインドではうまく機能しなかったとか。
グラミン銀行では人対人の信用関係のみで融資を行うそうです。銀行員は村々を回り顧客を管理する。そのため契約書類などは存在しないといいます。つまり管理コストを究極まで絞り込んでいる。
加えて、バングラデシュという国の圧倒的な人口密度の高さも良い方向に作用しますね。
顧客回りが楽になりますから。
その他にもバングラデシュという国と国民の特殊性にも助けられて、グラミン銀行の活躍は続くのです。
続く
==============ムハマド・ユニス講演(2)=====================
第2世代
私達が始めてから30年が経ちます。私達は借り手の子供たちに、私達の仕事が彼らの生活にどのようなインパクトを与えるか、という点で注目しています。私達の借り手である女性は常にその子供たちを最優先します。彼女達が考え定めた16項目の制約のひとつは子供たちを学校に通わせることです。グラミン銀行は彼女達を支援し、まもなく全ての子供たちは学校に行くようになりました。これらの子供たちの多くはクラスで主席となりました。そこで私達はこれを祝福したいと思い、優れた生徒のために奨学金を設けることにしました。グラミン銀行は今や毎年3万件の奨学金を与えています。
子供たちの多くは高等教育に進み、医者や技術者、大学の教員その他のプロフェッショナルとなりました。私達はグラミンの学生が高等教育を終了することを助けるために学生ローンも導入しました。今や彼らの何名かは博士号も持っています。学生ローンは13,000人に利用されています。毎年7,000人以上の学生がこれに加わります。
私達は、家族を貧困層から救い出すことのできる素養を持ったまったく新しい世代を作り出しているのです。私達は、貧困の歴史的な持続に対して風穴を開けたいのです。
物乞いをビジネスに転換
バングラデシュの80%の貧困家庭はすでにマイクロクレジットを利用しています。私達は2010年には100%の貧困家庭が加わってほしいと願っています。
3年前に私達は、物乞いに限定した独自のプログラムを開始しました。グラミン銀行の規則は全て彼らには当てはまりません。ローンは無利息です。彼らは払いたい金額をいくらでも、またいつでも返済すれば良いのです。私達は彼らに、物乞いで家々を回るときにはスナック菓子、おもちゃ、家庭用品などの小間物商品を持ち歩く、というアイデアを提供しました。このアイデアはうまく行きました。今では85,000人の物乞いがこのプログラムに参加しています。物乞いのローンは平均的に12US$です。
私達は貧しい人々が貧困と戦うために有力なさまざまな対策を奨励し援助します。私達はいつもそれらの対策にマイクロクレジットをつけ加えるよう推薦しており、マイクロクレジットはその対策を効果的にすると主張しています。
貧しい人々のための情報技術
情報と通信の技術(ICT)は、距離感を感じさせない境界の無い世界を瞬時的なコミュニケーションによって作り、急速に世界を変えています。それは日々安価になってゆきます。私はこの技術に、貧しい人々のニーズに合うように導入できれば、彼らの生活を変えることができる可能性があると見たのです。
最初のステップとして私達はICTを貧困層に導入するための携帯電話会社を設立しました。グラミンフォンです。私達はグラミン銀行から貧しい女性達に、村々で電話サービスを提供するための携帯電話を買う資金を貸し出しました。マイクロクレジットとICTの相乗効果を狙ったのです。
電話事業は成功し、グラミンの借り手たちにとって魅力的な事業となりました。テレフォンレディ達はすぐにこれを覚え電話事業の采配を振るうようになりました。そしてこの仕事は、貧困から抜け出し社会的信頼を得るための最短の方法となったのです。いまやバングラデシュの全ての村で、30万人のテレフォンレディが電話サービスビジネスを提供しています。
グラミンフォンは1000万人以上の契約者を持つ国内最大の携帯電話会社となったのです。
テレフォンレディの人数は契約者の人数に比べると少数に過ぎないのですが、会社の収益の19％を担っています。今日この盛大な式典に出席している9名の代表のうち4名がテレフォンレディなのです。
グラミンフォンはノルウェーのTelenorとバングラデシュのグラミンテレコムとの合弁会社です。Telenorはその62%の株を持ち、グラミンテレコムは38%です。私達の最終的な目標は、この会社の所有権の過半数を貧しい女性達に渡すことでソーシャルビジネスへと転換してゆくことです。私達はこの目標に向かって進んでいます。いつの日かグラミンフォンは貧しい女性達が所有する巨大事業のもう一つの例となるでしょう。
Second Generation
It is 30 years now since we began. We keep looking at the children of our borrowers to see what has been the impact of our work on their lives. The women who are our borrowers always gave topmost priority to the children. One of the Sixteen Decisions developed and followed by them was to send children to school. Grameen Bank encouraged them, and before long all the children were going to school. Many of these children made it to the top of their class. We wanted to celebrate that, so we introduced scholarships for talented students. Grameen Bank now gives 30,000 scholarships every year.
Many of the children went on to higher education to become doctors, engineers, college teachers and other professionals. We introduced student loans to make it easy for Grameen students to complete higher education. Now some of them have PhD's. There are 13,000 students on student loans. Over 7,000 students are now added to this number annually.
We are creating a completely new generation that will be well equipped to take their families way out of the reach of poverty. We want to make a break in the historical continuation of poverty.
Beggars Can Turn to Business
In Bangladesh 80 percent of the poor families have already been reached with microcredit. We are hoping that by 2010, 100 per cent of the poor families will be reached.
Three years ago we started an exclusive programme focusing on the beggars. None of Grameen Bank's rules apply to them. Loans are interest-free; they can pay whatever amount they wish, whenever they wish. We gave them the idea to carry small merchandise such as snacks, toys or household items, when they went from house to house for begging. The idea worked. There are now 85,000 beggars in the program. About 5,000 of them have already stopped begging completely. Typical loan to a beggar is $12.
We encourage and support every conceivable intervention to help the poor fight out of poverty. We always advocate microcredit in addition to all other interventions, arguing that microcredit makes those interventions work better.
Information Technology for the Poor
Information and communication technology (ICT) is quickly changing the world, creating distanceless, borderless world of instantaneous communications. Increasingly, it is becoming less and less costly. I saw an opportunity for the poor people to change their lives if this technology could be brought to them to meet their needs.
As a first step to bring ICT to the poor we created a mobile phone company, Grameen Phone. We gave loans from Grameen Bank to the poor women to buy mobile phones to sell phone services in the villages. We saw the synergy between microcredit and ICT.
The phone business was a success and became a coveted enterprise for Grameen borrowers. Telephone-ladies quickly learned and innovated the ropes of the telephone business, and it has become the quickest way to get out of poverty and to earn social respectability. Today there are nearly 300,000 telephone ladies providing telephone service in all the villages of Bangladesh . Grameen Phone has more than 10 million subscribers, and is the largest mobile phone company in the country. Although the number of telephone-ladies is only a small fraction of the total number of subscribers, they generate 19 per cent of the revenue of the company. Out of the nine board members who are attending this grand ceremony today 4 are telephone-ladies.
Grameen Phone is a joint-venture company owned by Telenor of Norway and Grameen Telecom of Bangladesh. Telenor owns 62 per cent share of the company, Grameen Telecom owns 38 per cent. Our vision was to ultimately convert this company into a social business by giving majority ownership to the poor women of Grameen Bank. We are working towards that goal. Someday Grameen Phone will become another example of a big enterprise owned by the poor women.
タグ：yunus
2010-02-04 13:08
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